オースティンと病気
ジェイン・オースティンは、1775年12月16日に生まれ、1817年7月18日に41歳で亡くなっている。死因は種々の症状から慢性副腎皮質不全症と言われているが、その時点ではこの疾病について知られることはなく、治療法もなかった。
1817年3月25日付けの姪のファニー・ナイト宛の手紙で、何週間も具合が悪く、熱が出たりし、顔色が悪かったと言っている。副腎皮質不全では顔が黒くなることがあるので、この病名が示唆された。
1817年4月6日付けのチャールス・オースティン宛の手紙では、それに先立つ2週間は手紙を書けないほど身体の具合が悪かったといっている。
4月27日には、葬式の費用、兄ヘンリーへ50ポンド、ビジョン夫人に50ポンドを贈り、残りはすべてカサンドラへ贈る旨の遺書を書いた。
1817年5月に、オースティンはそれまで住んでいたチョウトンから、医師の診察をうけるため姉のカサンドラに付添われてウィンチェスターへ赴いた。
5月27日付けのジェイムス・エドワード・オースティン宛の手紙は、ウインチェスターで書かれたもので、少し元気になって朝9時から夜は10時まで、ソファに横になっていることが多いけれど、元気で、ライフォード医師が治してくれるといっている。
その後は気分がすぐれず、徐々に弱って、7月18日に永遠の眠りについた。
慢性副腎皮質不全症
(primary adrenocortical insufficiency)
:1855年に英国人医師トーマス・A・アジソン(1793−1865)が初めて報告をしたので、アジソン病(Addison’s disease)としても知られている。
副腎とは、腎臓の上にある一対の扁平な器官で、表面は被膜におおわれている。副腎の内部を構成する層が慢性的に壊れたり萎縮すると、生命の維持に必要な副腎皮質ホルモンの生成が出来なくなる。症状は、全身がだるい感じ・脱力感、やせる、食欲不振、悪心・嘔吐、下痢、たちくらみ、めまい、低血糖、低血圧、頭痛、精神症状、皮膚の色素沈着などが見られる。原因は外傷、結核、癌転移などといわれる。
参考文献:
Austen, J:Selected Letters.2004 Oxford World’s Classics
Cecil, D:Portrait of Jane Austen
ステッドマン医学大辞典、1993年メジカルビュー社